歩行を詳しく見てみよう! 〜立脚終期から遊脚終期まで〜
こんにちは!
パーソナルトレーナーのけいすけです!
今回は前回の記事の続きで、「歩行」についてポイント毎に詳しく見ていきましょう。
前回の記事も載せておりますので、併せてご覧くださいませ。
[立脚終期(TSt)]
ここの動作が不安定になると、脚の振り出しがスムーズにできず、安定した歩行が難しくなります。
各関節は以下のような角度を取ります
・股関節伸展→約20°
・膝関節屈曲→約5°
・足関節背屈→約10°
この状態は、前足部より骨盤が前方に位置するポジションとなります。この時足関節底屈筋群は弛緩しておらず、下腿三頭筋はTStにおいて、歩行周期中最大の出力を発揮します。
TSt時における床反力のベクトルは、MTP関節を通過し上前方へ向かう=床反力は足関節背屈の方向へ働きます。その負荷に耐えるため、下腿三頭筋が働き踵が浮いた状態を保持しています。
TStでは足関節背屈位のまま、MTP関節が伸展して踵が浮きます。下腿三頭筋はこの時、等尺性収縮します。股関節屈筋群は股関節伸展による伸展、足関節背屈筋群は床反力に対する等尺性収縮の状況下でPSwを迎えます。
①TStの踵離床の重要性
TSt時に踵が離床していることで、人は重心制御をスムーズに行えます。TStでは両脚が前後に大きく開き、歩行周期全体で最も重心が少なくなります。正常歩行の条件の一つに「上下左右の重心移動が非常に少ない」ことがありますが、TStでも過度な重心低下を避けるため、踵が離床している方がいいのです。
②踵離床不全が、対側のICに及ぼす影響
TStにおいて、足関節底屈筋が活動し、前足部のMTP関節を支点に踵側が離床します。また距骨が下腿〜大腿を長軸方向へ押し上げ、骨盤を前上方へと持ち上げます。
こうした抗重力伸展活動や下肢の支持活動が、脚の末梢部から起こっていると言えます。そのため足関節底屈筋の活動が少ない場合、骨盤が支持脚側に残ることになります。この状態が起こると、重心が下がりすぎてしまい、股関節伸展が不足するというデメリットが発生してしまいます。
また左右の重心移動は、MSt時に最大の移動が見られ、TSt後半で正中付近になります。前述の支持側の足底筋活動が不足することで、骨盤が支持側に残ったまま対側のICが始まり、重心が支持側に残るというリスクが生まれやすくなります。
それにより、対側のICにおいて次のようなイレギュラーが発生しやすくなります。
・MStに向け、本来より多くの労力で重心を上方+側方へ移動させないといけなくなる。
・股関節が過度に内転する
③股屈筋の短縮によるTStのイレギュラー
・体幹前傾
・骨盤前傾および腰椎前傾
・股関節屈曲による膝屈曲
[前遊脚期(PSw)]
ここでは、対側が接地しIC〜LRのポイントへと移行します。そのため主に支持を担うのは対側下肢です。
この前遊脚期で重要になるのが、「いかに次に続く脚の振り出しにむけて、動作を加速できるのか」になります。そこで重要になるのが、TStにおける股関節屈筋群と下腿三頭筋の伸張です。
PSwでは、LRのポジションと取る対側下肢に重心が移動し、PSw側の下肢にかかる荷重が軽くなります。それによって、TStで伸張された股関節屈筋群・足関節底屈筋群が伸張性収縮を見せます。
それにより、次の2つの現象を起こして加速しながら、エネルギー効率の優れた脚の振り出しを可能とします。
・股関節屈曲→慣性により股関節が屈曲する
・足関節底屈で床を蹴り出し、下腿を前方に押し出し、それと合わせて腓腹筋が収縮→膝関節が屈曲する。
①TSt〜PSwにかけた股関節・膝関節制御
○TSt
・大腿筋膜張筋
TStにて股関節の過伸展を防ぐため、遠心性収縮をします。股関節外転作用による骨盤制御は、LR〜MStでは中臀筋、大臀筋等が働くが、TStは重心が対側へ移動し受動的な外転が起こるため、中・大臀筋の活動は弱まるが、大腿筋膜張筋の活動で十分骨盤の制御が可能になります。
・足関節底屈筋群
下腿の過前傾にブレーキをかけます。その状態で骨盤の前進の勢いが加わり、膝関節を支点とした大腿骨の前傾→受動的な膝関節伸展が起こります。
○PSw
・大腿直筋
脚の振り出し時、TStにで伸張された股関節屈筋群の収縮により、受動的な股関節屈曲を起こします。大腿直筋はその動作をサポートしつつ、膝関節の屈曲の勢いを抑えるブレーキとしても働きます。
・長内転筋
この筋も、股関節をサポートします。さらには骨盤が対側下肢側に移動することで生じる股外転のモーメントに対してブレーキの役目を果たします。
[Sw(遊脚期)]
このポイントの目的は大きく2点あります。
・足をスムーズに前方へ運ぶ
・立脚期(IC)の準備をする
足を前に運ぶためには、足のクリアランスの確保が必須であり、クリアランス不足はつまずき・転倒の原因になります。
遊脚期では足関節背屈筋群が常に活動し、下腿前傾=LRまでその活動は継続しているのが特徴です。
[ISw(遊脚初期)]
ISwは、PSwで作り出した筋の伸張を活用して、振り出しの勢いをつける「加速期」と言えます。ここで股関節・膝関節のスムーズな屈曲ができることで、クリアランスの確保や筋活動を抑えた効率的な運動が獲得できます。
ISwでは主に次の筋が作用します。
・腸骨筋、長内転筋=股関節屈曲
・縫工筋、薄筋=股関節屈曲並びに膝関節屈曲
・大腿二頭筋短頭=膝関節屈曲
・前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋=足関節背屈
[MSw(遊脚中期)]
MSwから膝関節伸展が開始され、歩幅が確保されます。股関節屈曲・足関節背屈が不足すると躓きやすいが、この2点が確保されていてもISw・MSwで躓く方も多くいらっしゃいます。その場合は、骨盤が遊脚側に下制していないかを確認するのがオススメです。骨盤下制で股関節の高さが下がることで、クリアランスが低下するからと言われています。
ISwで十分に大腿骨の運動の加速が確保できれば、股関節屈筋群に伴うエネルギーは最小限に押さえられています。またISwの股関節屈曲で生じた位置エネルギーを利用し、受動的な膝関節伸展も得られやすくなります。
こうした点から、各筋は次のような動きをしています。
・大腿二頭筋短頭=必要に応じて膝伸展の速度を制限している
・足関節背屈筋群=足関節底屈の予防
[TSw(遊脚終期)]
TSwは足を振り出し、ICの準備をするところです。TSwにて足関節を背屈し、床と踵の距離=自由落下の距離を減らすことにより、ICでの接地を軽減できます。
こうした動作のため、TSwでは次のような筋活動が見られます。
・大腿筋膜張筋、中臀筋、大臀筋上部繊維=骨盤の安定
・大内転筋、大臀筋下部繊維=股関節伸展
・ハムストリングス、大腿広筋群=膝屈筋・伸筋の同時収縮
・足関節背屈筋群=ICに備えて筋活動を高める
歩行を詳しく見てみよう! 〜初期接地から立脚中期まで〜
こんにちは!
パーソナルトレーナーのけいすけです!
今回は前回からブログにも載せている「歩行」について、ポイント毎に詳しくお伝えしていきます。
前回以降の記事も是非ご覧くださいませ。
[初期接地(IC)]
振り出した足が地面に接地することで床反力が生じ、その床反力の衝撃は足関節底、膝関節伸展、股関節屈曲にそれぞれ作用します。
床反力の衝撃をうまくコントロールできない場合、体幹が前傾し臀部が引ける、膝伸展・下腿後傾し膝が過伸展するといったイレギュラーが発生しやすくなります。
ICでは、次の筋が働き床反力の衝撃を制御します。
・股関節屈曲→ハムストリングス
・足関節背屈→前脛骨筋
大内転筋は股関節屈曲位で伸展活動に関わり、ICおよびLR、立ち上がり動作等の股関節屈曲位からの伸展活動で重要な筋でもあります。ハムストリングスに近い体積をしているので、股関節安定・調整よりも大きなパワーを発揮することに向いています。
○動作確認と対処方法
ここでは足を振り出してから接地した瞬間に、身体を支持できる状態を作るということが重要です。また下肢の抗重力伸展活動が弱く、立位などでも荷重を下肢の筋活動で支持する感覚を獲得できないといけません。
[荷重応答期(LR)]
このポイントは初期接地から立脚中期への移行で、急激に荷重が乗るポイントなので、歩行周期において最も難しい状態と言われています。
ここでは、筋活動である大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、前脛骨筋等が一瞬で起こる体重移動で瞬発的な筋収縮を発揮できるかが大切になります。
○下腿・大腿の連動
IC〜LRで非常に重要なのが、足部から下腿〜大腿の連動した動きになります。LRでは急激にかかる荷重をうまく受け止め、運動エネルギーを位置エネルギーに変換させる必要があります。
うまく機能しないと、重心があがらず骨盤が足・股関節よりも前方に移動できない、お尻が引いたまま単脚支持せざるを得ないといったイレギュラーに繋がります。
○足部と膝の関係
足接地時、荷重がかかることで踵骨が5°外反します。この動作で距骨周辺では次のような変化が起こります。
①距骨の底屈および内旋
距骨は外果・内果に挟まれています。距骨を内旋させると、下腿の内旋が起こってきます。スクリューホームムーブメントにより、下腿内旋では膝関節が屈曲しやすくなり、十字靭帯が交差し動的安定性が高まります。
②距舟関節および踵立方関節の関節軸の平行化
横足根間関節の緩みが生じ、足部の衝撃吸収が可能となります。
[立脚中期]
①MSt early
運動エネルギーが位置エネルギーに変換されます。重心を上前方へ移行するための筋活動が必要になります。
②MSt late
位置エネルギーが運動エネルギーに変換されます。下肢直立位に到達後、前に倒れる勢いだけで重心は前に移動するため、筋活動はほぼ不要になります。
ここのポイントにおいて効率的な歩行は、「なるべくスムーズに下肢直立位に到達できるか」が大きなポイントになります。MSt earlyでは、LRでの大腿広筋群の求心性収縮が持続し、下肢直立位を越えMSt lateに差しかかるタイミングでヒラメ筋が活躍します。
そしてMSt lateでは、位置エネルギーと慣性で骨盤が前進し、下腿が前傾します。ヒラメ筋は下腿の過度な前傾を防ぐため、遠心性収縮します。また中臀筋は、単脚支持であるMStにて骨盤が対側へ下制し過ぎないように働きます。腓骨筋は下腿が対側に傾き過ぎないよう、下腿を支持側方向へ引きつけるように働きます。
○MStにおける膝折れ
①MSt earlyでの膝折れ
下腿前傾から続く、大腿広筋群の収縮による大腿前傾の不足。もしくは股関節伸展筋群の不足による骨盤の後退が要因になります。
②MSt lateでの膝折れ
下腿前傾に対する、ヒラメ筋の遠心性収縮によるブレーキ作用の不足が要因です。
○安定した下肢直立位の獲得メリット
①股・膝周囲筋の活動負担が減る
MSt以降は位置エネルギーを利用した前進となるため、負担が減ると言われています。
②立位保持にも役立つ
立位では両脚支持でもあり、片足支持よりも負担が少なくなります。MStでの下肢直立位が安定することで、立位の保持に役立ちます。
③LRでの荷重・前進も安定しやすい
下肢直立位の支持に不安なくなることで、直前のLRでの動作で下肢直立位が安定することで、立位の保持に役立ちます。
○動作確認
以下の点ができるかが大切です。
・各動作が上半身を上方へ持ち上げるように作用している
・大腿骨が下腿長軸を押さえ、安定している
・立位において、大腿下腿の長軸方向に荷重がかかっている
正常な歩行動作を意識すると・・・?! 〜正しい歩行条件〜
こんにちは!
パーソナルトレーナーのけいすけです!
前回で「歩行周期」についての記事を書かせていただきましたが、今回は「正しい歩行」というテーマでお話していきます。
[正常歩行の要素]
①重心移動が少ない
・上下方向の重心移動
歩行周期において、上下方向の重心移動は2回行われます。両脚支持の状態であるIC、LRにおいて、重心は最も低くなります。MStに差し掛かると、重心を低い位置から最も高い位置へ押し上げ、また低い位置へと重心が移動します。
上下方向において生じる位置エネルギーと、位置エネルギー→運動エネルギーの転換によって、歩行は過度な筋活動は生まれず、エネルギー消費の少ない移動を可能としています。
・左右方向への身体重心の動き
一度の歩行周期において、左右どちらかに1回重心移動が発生します。どちらの移動に対しても、MStにて支持脚と同足に最も大きい重心移動が見られました。
②筋活動が少ない
歩行での正常な重心移動では、「筋収縮による関節運動」「重力による関節回転運動」「慣性エネルギー」の3種類が働いており、これらの運動から発したエネルギーを活用することで、余分な筋活動を排除した前進が可能になります。
③衝撃吸収
※各関節の衝撃吸収作用
・足関節
LRにおいて、前脛骨筋の遠心性収縮により足底屈をコントロールします。
・距骨下関節
LRにおいて、踵骨回内により足部の柔軟性向上に作用します。
・膝関節
LRにおいて、大腿四頭筋の遠心性収縮により膝屈曲をコントロールします。
・股関節
TStにおいて、単脚支持の対側の骨盤下制をコントロールします。
④正常歩行で見られるロッカー機能
・ヒールロッカー機能
踵を回転軸の中心としたロッカー機能です。IC〜LRにおいて、重心が落ちる時に生じる衝撃を吸収する作用があります。ヒールロッカー機能は前脛骨筋や大腿四頭筋の遠心性収縮によって主にコントロールされています。
・アンクルロッカー機能
足関節を回転軸の中心とし、KR〜MTで重心を上昇させるためのアクセルと、前方へ回転に対するブレーキとして働きます。なかでもヒラメ筋の遠心性収縮が、前方への回転に対するブレーキをコントロールしています。
・フォアフットロッカー機能
中足骨遠位と基節骨近位からなるMTPが回転軸の中心となり、MT〜TSにおいて前方への推進力、緩やかな重心下降をコントロールします。腓腹筋の筋力が非常に強く働いております。
「歩行」を意識するだけで痩せていく?! 〜歩行周期とは?〜
こんにちは!
パーソナルトレーナーのけいすけです!
今回は人が日常生活をする上で大切な「歩行」についてお話していきます。
この歩行をお話する上でまずは「歩行周期」をお伝えしていきます。
これによって、どの筋肉が大切なのか?どういった歩行が正しい歩行なのか?をより理解できると思います。
[歩行周期]
歩行周期とは、「一方の脚が地面に着いて、地面を離れてから再び同じ脚が地面につくまで」を周期にしたものになります。
①立脚期
・初期接地
足が着いた瞬間であり、ヒールロッカーのポジションで開始するのが主な役割です
・荷重応答期
足が着いた瞬間〜対側下肢が床から離れるまで。主に初期接地における衝撃を吸収し、荷重を引き継ぎつつ前方動作等の安定性確保を担います
・立脚中期
対側の足が床から離れる〜支持脚の踵が床から離れるまで。支持脚を支点とし、前方動作や下肢・体幹の安定性を確保しています
・立脚終期
踵が床から離れる〜対側下肢接地までの動作で、身体を支持脚より前方へ運びます
・前遊脚期
対側下肢が接地〜支持脚のつま先が床から離れるまでの状態を指し、遊脚初期への準備をします
②遊脚期
・遊脚初期
足がつま先が床から離れる〜両下腿が矢状面で交差するまでの状態を指し、床から対側の足が離れ、支持脚の前へ運ぶように動きます。
・遊脚中期
両下腿が矢状面で交差〜対側の下腿が垂直になるまで。対側の脚を前方へ運び、床からつま先の間隔を確保しています。
・遊脚終期
下腿が垂直になる〜足が接地するまで。対側の脚の立脚準備に入ります。
[歩行周期ごとに働く筋肉]
・初期接地
・荷重応答期
・立脚中期
中臀筋、外側広筋、ヒラメ筋、長腓骨筋、短腓骨筋
・立脚終期
・前遊脚期
・遊脚初期
・遊脚中期
・遊脚終期
外側広筋、大腿二頭筋、前脛骨筋
[歩行・走行で作用する体幹の筋肉の特徴]
ある研究によると、秒速1mのややゆっくりとした歩行において、腹直筋の収縮活動はほぼ見られないという研究が示されています。逆に、腹横筋・内閉鎖筋や脊柱起立筋・多裂筋は長時間に渡り収縮していたという結果が示されました。
秒速2mのやや早いペースの歩行では、断続的に腹直筋の収縮活動が見られています。腹横筋は収縮が持続し、内閉鎖筋は歩行スピードが速くなると少し抜けるものの、運動中約9割で収縮します。外閉鎖筋の収縮時間もやや伸びた結果が得られています。
ちなみに同じ秒速2mでランニングをすると、腹横筋は常に活動することがわかっています。内閉鎖筋と外閉鎖筋も高い頻度で収縮し、歩行時より多裂筋の収縮頻度が上がったことが示されています。
ここから秒速3m、秒速4mに速度をあげても腹横筋等の活動は継続されることが示されています。
このことから、歩行・走行において腹横筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、脊柱起立筋、多裂筋が非常に重要ということが示されています。
コロナ禍での運動不足がもたらす危険性とは?
こんにちは!
パーソナルトレーナーのけいすけです!
今回はタイトルにもある通り、コロナ禍での運動不足がどのような影響を身体に与えるのかをお伝えしていきます。
その影響は様々ありますが、今回は「椎間板ヘルニア」という疾患をメインにお伝えして行きます。
椎間板ヘルニアは今までも身近に起こり得る疾患でしたが、運動不足が顕著な昨今こそ注意が必要になってきます。
今回は腰椎の構造も一緒にお話していきたいと思います。
[腰椎の構造]
腰椎は5個の椎骨で形成されており、上からL1~5と略されています。腰椎の椎体はより高重量を支える必要があり、その形状も大きくなっていきます。椎弓も強大で、椎孔の形は三角形の形状をしています。
腰椎の横突起の先端部は「肋骨突起」と呼ばれています。腰部に残っている肋骨の痕跡を含んでいるため、長い形状をしているのが特徴です。
本来の横突起は「乳頭突起」と呼ばれており、上関節突起の外側から後方に向かう小さな隆起として残っています。肋骨突起の根部の後面には、下方に向かう「副突起」という小突起があります。これも本来の横突起の一部が変形したものになります。
腰椎の棘突起は幅が広く短い形状になっています。側方から見ると、四角形の板状でほぼ水平方向に後方へ突出しています。骨粗鬆症における椎骨圧迫骨折などの障害も起こりやすい骨になります。
成人では一般的に脊髄はL1とL2の椎間のあたりで終わり、それ以下の髄腔内には末梢神経の集合した馬尾が存在しています。
腰椎は関節面の向きの関係上、回旋可動域が非常に狭い構造をしています。そのため、腰を捻る動作は腰椎にとって構造的なストレスがかかり腰椎の原因にもなります。
[椎間板ヘルニア]
椎体と椎体の間には椎間板が存在しています。椎間板内部にあるゼラチン状の髄核であり、コラーゲンを豊富に含む線維輪などの一部が突出した状態のことをいいます。つまり、椎間板の内部の髄核が脊柱管内に脱出を起こした状態を「椎間板ヘルニア」といいます。
髄核は80%以上が水分で、非常に親水性が高いという特徴を持ちます。立位により圧迫荷重がかかる水分が逃げ、数時間の睡眠により、水分の再吸収され髄核の厚みが回復します。
十分な睡眠をとった朝と一日活動を終えた夜を比較すると、微妙に身長差が生じるのはこのためでもあります。
椎間板水分量は、下位腰椎が最多で次に下位頚椎が多く、胸椎はごく少量になります。
胸椎に少ないのは胸郭との位置関係により、椎体間の可動性が、頚椎や腰椎に比べて少ないためです。
[腰椎下位椎間板ヘルニアの症状]
椎間板ヘルニアによってL4~L5の神経根圧迫により、下肢痛が生じます。具体的には次のような症状です。
・腰、下肢の疼痛や痺れ
・腰、下肢に大きな浮腫が見られる
・足があげられないほど重くなる
・関係神経の支配領域に感覚障害が起こる
・運動神経麻痺による筋力低下
・腓返りなどの痙攣を誘発
[腰椎上位椎間板ヘルニア]
上位腰椎椎間板ヘルニアの場合、腰痛や股関節痛が起こり、それ以外の場所では一般的に腰痛は起こらないとされています。
神経根走行の関係で、下位腰椎は上位腰椎に比べ、神経根症状を起こしやすい傾向にあります。
特に腰椎椎間板ヘルニアの場合、片側の下肢痛が症状として多く見られますが真後ろに突出したヘルニアの場合、両側で症状が見られることもあります。
[若年性椎間板ヘルニア]
若年性椎間板ヘルニアは、高齢者に比べて椎間板内圧が高いため、より強い症状を訴える傾向にあります。また、下肢挙上時の腰椎股関節伸展拘縮のように、該当部位の反応が強く現れることも多くなります。
[椎間板ヘルニアの原因]
①日常生活での不良動作・姿勢
・長時間に渡る中腰での作業
・腰を強く捻る
・座位中心の生活
②骨密度の低下
椎間板は20歳を過ぎた頃から、徐々に弾力性が失われていく傾向にあります。
同時に不規則な生活や偏食などにより骨密度が低下することで、少しの衝撃でも椎間板が変形しやしく、椎間板の一部が突出しやすくなります。
③遺伝的な要因
遺伝により椎骨の配列が乱れていたり、骨密度が低下していたりする場合、変形や骨折のリスクが高まります。
[椎間板ヘルニアの対処法]
①体液循環の改善
入浴やマッサージなどを行い、全身の体液循環を促進させます。
②ストレッチ
腰椎椎間板ヘルニアでは、姿勢や体動などにより椎間板への圧迫が強まると、ヘルニアが神経を圧迫して痛み・痺れを悪化させる危険性があります。特に前屈みの姿勢では、症状悪化の危険性が高くなります。
この場合、腰を反らすストレッチで椎間板の圧迫が減少され、症状を軽減することができます。腰椎椎間板ヘルニアの除圧ストレッチは、上体反らしが特に有効になります。
また骨盤周囲の筋の柔軟性の低下により腰椎や骨盤の動きに悪影響を及ぼすこともあるため、腰だけでなく下肢のストレッチも行うのが適切です。骨盤後傾筋である大臀筋・ハムストリングスは特に重点的に行うことが大切です。
③トリガーポイントの刺激
{腰痛や坐骨神経痛の原因になるトリガーポイントと対応するストレッチ}
・腰の片側が痛む場合→脊柱起立筋、腰方形筋のストレッチ
・腰の中心や骨盤周囲が痛む場合→中臀筋、大臀筋、腰方形筋のストレッチ
・腰から脚にかけて痛む場合のストレッチ→小臀筋、ハムのストレッチ
・坐骨結節を中心に膝窩にかけて痛む場合→ハムのストレッチ
④運動機能向上
発痛部位を庇う癖により、他の筋肉の柔軟性・筋力の低下や、姿勢悪化が引き起こされる場合があります。胸椎の回旋と股関節の運動機能向上は予防や改善に大きな効果を発揮します。
⑤筋力トレーニング
ストレッチだけでは除圧効果は十分とは言えないので、柔軟性確保とともに体幹トレーニングを行うことで、椎間板への圧迫が軽減されます。骨盤前傾筋である、腸腰筋・大腿四頭筋は特に重点的にトレーニングしていくことが大切です。